【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「黎祥!―あっ、違う!御来駕を賜り、恐悦至極の……」
「そんな挨拶こそ、どうでもいい。宮から出ていたみたいだが……お前は無事なのかっ?」
切羽詰まったような黎祥は翠蓮の頬に触れ、温もりを確認すると、ほっと息を吐き出す。
「……心配、かけちゃった?」
「当たり前だろう。……無事でよかった」
抱き寄せられて、身を任せる。
「黄充儀の話は聞いたな?」
「ええ……」
抱きしめられたまま、問われたことについて返す。
「どう読む?」
「……詳しいことがわからないから、なんとも。でも、刺傷だったとは聞いたわ」
「その通りだ。まるで、意図的な……いや、違うな。不意をつかれた、というところか」
「…………流雲殿下」
「なあに?」
「貴方は情報収集に長けていらっしゃる」
「……それで?」
黎祥から離れて、流雲殿下を見据える。
「聞きたいことがあります。―何か、表に隠していることはありませんか?バレてしまったら、すぐに蘇貴太妃様を引きずり出せるような……」
「……それを答えて、僕になんの得がある?」
「得の話をしているのではありません!」
「……」
「この国のために、教えてくれませんか」
けれど、流雲殿下は首を横に振って。