【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―



「私もいるわよ」


「麗宝姉上!?」


「段々、ややこしいことになってきたでしょう?力を貸すために、ここに来たの」


「……」


堂々とした佇まい。


怯えることの無い、泉賢妃。


先程は、用事があると―……。


「犯人、分かったわ」


「え!?」


「嵐雪と彩姫、灯蘭と祐鳳と調べていたの。そうしたら、複数人の妃が―……」


麗宝姉上の口から上げられた、名前たち。


異世界からの、お客様。


死んでしまった、人達と。


毒に倒れた、方々と。


前世の記憶を有し、神を従える力を得た私たち。


『僕の"母上”の望みは、位じゃない。教えた花でだって、何もしてない。……彼女が望んでいるのは、"死”だ。それも、幸福の……だから、お願い。時間を頂戴』


……流雲殿下の言葉に、優しい蘇貴太妃の笑顔。


嫌味っぽいのは、なんの為?


もっと、周囲を見ろ。


向淑妃もまた、隠し事をしていたんだから。


麗宝様の口から語られた、昔の話。


それを聞いている間、麗宝様は淡々としていて。


黎祥も、何も言わなくて。


露珠様は震え、そして、泉賢妃もまた、別の妃の昔の話を聞かせてくれた。


それを聞き終えた時、翠蓮は自らの足で立ってられなくなって―……


「翠蓮!」


「あ……だって、そんな……そんな……」


壮絶すぎるものに、涙が止まらない。


意思も関係なく、ただ、溢れ出す。


「どうして、そんなことに―……」


誰も悪くない。


彼女たちは誰も、悪くないじゃない。


悪いのはいつだって、この権力社会……。


「父様……っ」


翠蓮は黎祥に縋って、ただ、嗚咽する。


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