【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「お前は、姉を愛していた」
「っ、うるさい……」
「だから、許せなかった」
「うるさい……」
「私のことも」
「……」
「私に愛されている、翠蓮のことも」
「……」
「それでも、翠蓮が笑うから。泣いていても、どんな決断をしていても、最後には笑うから。それに、自らの姉を重ねたんだろう?」
新皇帝は聡い。
先帝よりも何倍も、何倍も聡くて、そして、怖い。
「っ、やめてください……」
声が、自然と震え出す。
口調は柔らかく、確かにその顔に笑みを称えているのに、彼は笑ってない。
全く、笑ってくれてない。
途中から、反抗なんて出来なくなった。
だって、彼の微笑んでいる目の奥は光がなかった。
「私を傷つけることは、構わぬよ」
「……っ」
「翠蓮を傷つけたいと望んでいる訳でもないのなら、何故、翠蓮が危機に陥ることばかりするのだ」
「わたっ、私は……姉様が……」
「彼女は、円皇后ではない。李翠蓮……私の最愛の妻だ」
言い切った目の前の、仮にも自分の夫でもある男。
三千の妃を持っているくせに、決して、妻とは認めない。
彼の中で、彼の妻は李翠蓮しか存在しない。
そう、先帝の中にあの女しか存在しなかったように。