『One more Love♡』
「パパ,どこいくの?」

タイミング良くトイレから出てきた璃桜くんは,慎さんに尋ねる。

「璃桜,起きたのね。下のサロンに用事があって行くだけだよ。すぐ戻って来るけど…璃桜も行く?」
「……いく~」
「よし。じゃぁ,おいで」

慎さんは,しゃがんで両腕を開いて出すと,璃桜くんを抱っこして下の階のサロンへと向かったのだ。





「お疲れ~」
「お疲れ様で…って…あれ?慎さん(オーナー),今日スタジオでの仕事じゃありませんでしたっけ?」
「そうよ。スタジオでの仕事。思ったよりも早く終わったから,戻ってたのよ。んで,ちょっとサロンの様子を見に下りて来たってわけ」
「そうだったんですね。おかえりなさい。りっくんもおかえり~」

気さくに話し掛けたのは,美容サロン« SAKULA*❀٭»のアシスタントを務める,星野 茉莉花(セイヤ マリカ)だ。

「はい。ただいま。」
「………」
「りっくん?」

璃桜くんは,『プイッ』っとソッポ向く。

「ごめんなさいね,マリィ…璃桜は人見知りが激しいから…悪気はないの。許してあげてね?」
「ショックですけど…大丈夫ですよ。りっくんの人見知りが激しいのは知ってますから」

茉莉花が微笑んでそう言う。

「ありがとね。それで…何か変わった事とかない?」
「いえ。特には…あ!!でも,1つだけ…」
「何かしら?」
「乃木様からお電話がありまして…」
「乃木様から?何て?」
「〝五十嵐 心さん指名で,娘のネイルの予約をお願いしたいんですが…〟って言われましたが,そんな名前のスタッフは居ません…って伝えたら,〝前にワタクシの爪をしてくれた人にお願いしたいの…〟って言われまして…」

茉莉花は,苦笑いしながら慎さんに伝えると,〝分かったわ。後で乃木様には,ワタシから直接電話するわ〟っと伝えたのだ。

「他には?」
「他には何もないですね,今の所…」
「了解。」

慎さんは,茉莉花から大体の店の動きを聞くと,ネイルコーナーへと向かう。

「郁翔(イクト),ちょっといい?」
「慎,どうした?」

慎さんの事を〝慎〟っと呼んだのは,慎さんのイトコの桜華縞 郁翔(ミカシマ イクト)だ。
郁翔さんは,ごく稀にしか居ない男性ネイリストで,慎さんのサロンでのネイリストのリーダー的存在。

「ちょっと相談…ってかお願い(?)があるのよ」
「お願い?」

郁翔さんは,席を立つと慎さんの傍にやって来る。

「お。璃桜じゃないか。元気か?」
「………」

璃桜くんは,再び『プイッ』っとソッポ向く。

「……璃桜…まだオレに心開いてくれないのか?いい加減,おじさんもショックだぞ」

郁翔さんが苦笑いしながら尋ねる。
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