夢原夫婦のヒミツ
「たしかにいつ、どこでなにが起こるかわかりません。もしかしたら事故や事件に巻き込まれてしまうかもしれないし。……でも私はなにがあっても、絶対に大和さんのそばからいなくなりません。……もしこの世からいなくなっちゃっても、幽霊になって大和さんとずっと一緒にいる気がしますもん」

私も大和さんも家族を失った。大切な人を失う悲しみを知っている。だからこそ絶対にそばから離れない。

例えば彼より先に亡くなったら、絶対に幽霊になってでもそばから離れたくない。

「それに私は大和さんより七歳も下なんですよ? 残されるのは私の方じゃないですか」

おどけて言うと、彼は目を丸くさせた後少しだけ頬を緩めた。

「そう、だな。年齢的には俺が愛実を残して逝く形だよな」

「そうですよ」

頬を膨らませて言うと、大和さんはコツンと私の額に自分の額をくっ付けた。

「だめだな、俺は。全然年上らしく振る舞えていない。愛実の方が大人だ」

いつになく弱気な大和さんに、胸がギュッと締めつけられる。

大和さんは自分をだめだと言うけど、そんなことないのに。むしろ……。

「私は今の大和さんの方が、ずっと魅力的で好きですよ?」

「えっ?」

驚く彼に笑みが零れる。
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