夢原夫婦のヒミツ
ひとしきりふたりで笑った後、大和さんは再び私に顔を近づけてきた。

「それと愛実になにもできなかった理由は、もうひとつあるんだ」

「な、なんでしょうか?」

突然彼の顔が間近に迫りのけ反る。そんな私の背中に腕を回し、大和さんは自分の方にグッと引き寄せた。そして私の耳元に顔を近づけ、甘い声で囁いた。

「一度愛実に触れたら、今後自分を抑える自信がないから」

鼓膜を刺激する甘い声で囁かれたセリフに胸が苦しくなる。

「……えっ?」

ワンテンポ遅れて反応すると、大和さんは私の顔を覗き込んだ。

「触れたら最後、これからずっと愛実のことを求めちゃうと思うけどそれでもいい?」

「……っ」

彼の言葉の意味を理解出来ないほど、私はもう子供じゃない。

それに私は、ずっと大和さんに触れてほしかった。夫婦らしいことを全部したかったの。だから――。

「……いいですよ。たくさん求めてください」

恥ずかしい気持ちを抑えて言うと、大和さんは目を丸くさせた後、苦しげに顔を歪めた。
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