夢原夫婦のヒミツ
「いや、俺が気になるからだめ。お風呂沸いてる?」

「はい、沸いてます」

「ありがとう。じゃあ先に風呂に入らせてもらうよ」

私の髪をクシャッと撫でて、彼は浴室へと向かう。その後ろ姿を見送りながら、撫でられた髪に触れた。

もうちょっと抱きしめてもらいたかったんだけどな。

でもこれからしばらくは、家に帰れば大和さんがいるもの。時間はたっぷりあるよね。

まずは大和さんに美味しいご飯を用意しないと。

キッチンへ戻り、大和さんがお風呂から上がる前に準備を進めていった。

その後、大和さんは私が作った料理を全部美味しいと言って食べてくれた。

片づけを済ませた後、珈琲を飲みながら彼に聞いたのは過酷な災害現場での話。

「残念ながら助けられなかった人たちもいたよ。……でも救えた命もあった」

「……そうだったんですね」

きっと私の想像以上に大変だったと思う。

テレビでは報道されていない部分が、たくさんあるから。それを五年前、私も実際に被災して身を持って経験した。
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