夢原夫婦のヒミツ
眠れないまま夕方となり、夕食が運ばれてきた。だけどやっぱり食欲がなくて、箸が進まない。

手にしていた箸を置き、窓の外を眺めようとした時、視界に入ったのは昨夜枕元にあった袋に入っている迷彩服。

「そういえば、これ……なんだろう」

おばあちゃんに聞けず、ずっと枕元に置きっぱなしになっていた。

私の物ではないし、迷彩服なんて家族の誰も着ていなかった。それじゃこれは誰のもの?

それにどうしてこんなに汚れているのだろうか。誰が枕元に置いたんだろう。

手に取って見つめていると、部屋のドアをノックする音が聞こえた。

「失礼します。どうですか? 鈴木さん、少しは食べられましたか?」

部屋に入ってきたのは担当の看護師さんだった。

朝食も昼食もあまり食べられなかったから、心配して様子を見に来てくれたようだ。

「すみません、やっぱりまだ食欲なくて……」

申し訳なく思いながら伝えると、看護師さんの瞳が大きく揺れた。

「そうですか。……あ、でも少しは食べられたんですね」

「はい」

とはいっても、本当に少しだけど。
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