夢原夫婦のヒミツ
家族を失うという辛いことがあった。でも悲しくて苦しいことばかりではなかった。

私にはこうしていつも力になってくれる友達がいる。おばあちゃんだっている。……それに好きな人もいる。

失う怖さを知っているからこそ、大切な人との時間を失わないように過ごしていきたいと願う。

会ったことがない大和さんのことも、ずっと――。だから……。


次の日。
大和さんが勤務の時間を見計らって、私は緊張しながら初めて彼の携帯番号に電話を掛けた。

何度か呼び出し音が鳴ると、聞こえてきたのは留守番サービスのアナウンス。

そこにドキドキしながら、今の私に伝えられる精いっぱいの気持ちを残した。

「……初めまして、鈴木愛実です。大和さん、この前は伝言メッセージをありがとうございました。大和さんが応援してくれたおかげで私、行きたかった大学に合格することができました。……来月から両親も応援してくれていた、管理栄養士になるために勉強を頑張ります」

合格したことは手紙じゃなくて、直接自分の声で大和さんに報告したかった。それともうひとつ、伝えたいことがある。
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