mirage of story
「その程度の腕で、よく一人此処に乗り込んできたもんだ。
笑わせてくれる。
お前のような奴がルシアスを.....愚弄も程々にしろっ!」
ギイィィインッ。
――――ザッ。
鋭い刃が私を狙い、それを避けたはずの私は腕に迸る痛みに顔を歪める。
じわり。
避けきれなかったのだろう。腕から鮮血が流れ、服を紅に染める。
「人間さえ......お前さえ居なければ、アイツは!」
ザンッ。
再び刃が襲い、今度は脇腹を斬られた。
腕から流れるものよりも遥かに多量の鮮血が、空気中に飛び散る。
ライルの剣が、一気に紅く染まり潤った。
凄く痛い。
痛い.....焼けるように痛い。
私は嗚咽を漏らしそうになるが、必死にそれを飲み込む。
「アイツが死ぬことはなかったんだ!
アイツは優しかった、誰よりも平和を願っていた!
人が幸せであることを心の底から望んでいた!
そんなアイツが何故死ぬ必要があった?どうして死ななければならなかった!?
死ななければならなかったのは、アイツじゃない......愚かな考えを起こし戦争を起こした人間だったはずなのにっ!」
ザンッ.....ザッ。
ライルの感情が高ぶっていくのが分かった。
そしてその感情に伴い、振るう剣の威力も上がっていく。
もう、彼の力は常人を遥かに越えていた。
背中の辺り、そしてまた脇腹の辺り。
私は剣を握ったまま為されるがまま。剣を振るいはしない。
血に染められ、身体がライルの感情とその刃に切り刻まれていく。
滴る血が、大地の上に落ち紅い水溜まりを作り上げる。
その水溜まりが私に、相当の出血量であることを告げる。
それを裏付けるように、目が霞んできた。
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