mirage of story










全身が痛い。
身体に力が入らずに、持っていた剣をついに放した。

視界が、歪んでいく。


歪んでいく視界の端には自分の身体から引き抜かれる刃の煌めきが見えた。
















「はぁ......はぁ.....」



上から荒い息遣いが聞こえる。

あぁ、きっともうすぐ。
もうすぐ私の命を絶つ、留めの刃がやって来る。


そう分かった。








でもいいのだ。
だって私が此処に来たのは、全てを終わらせるため。けじめをつけるため。

........私がシエラとして、そしてルシアスとして彼に与えてしまった哀しみと苦しみの付けを清算するため。






私がルシアスだと彼に明かしていたら、彼はどうしたのだろう。

信じなかったか、それとも信じただろうか。
今のこの結果と、同じだっただろうか。それとも違ったのだろうか。





......まぁ、私にはどうでもいいのだけれど。

たとえ彼が事実を認めてくれたとしても、私はもう彼の知るルシアスには戻れない。
シエラとして魔族を憎む自分が居て、彼を愛すると同時に憎んでしまうから。



一度刻まれた憎しみを、捨てることは出来ない。

捨ててしまえば、魔族に命を奪われた母さんや共に戦ってきた仲間達に背くことになるから。
だから捨てられなかった、どうしても。















事実を彼に明かしても、もう前の幸せな日々には戻れない。

........だったら報せないまま、彼の気の済むまで私は彼に全てを捧げようと思った。
それが私に出来る最大のこと、彼に対する罪滅ぼしだから。









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