mirage of story
カイムは一瞬だけ驚いた表情を私に見せ、それから私の気持ちの全てを悟ったように微笑み頷いた。
ジェイドさんは、いつもと同じように笑って『嬢ちゃんがそうしてぇなら行って来な?』と私に手をヒラヒラ振って見せた。
ロキさんは相変わらずの鉄仮面で何も言ってはくれなかったが、それが彼にとって肯定の意志だと私は思った。
そして、ジスは。
強く決意した私に『こうしてまた姫様と相見ることが出来たというのに、貴方はまた離れていく......』と、遠い目をして頷いた。
ジスは老いた瞳で私を見て、自分が何を言おうと私の決意は変わらないと諦めたのかもしれない。
ジスは哀しそうに目を伏せると、懐に手をやり何かを取り出し私に差し出す。
それは、地図のようだった。
その地図のある一点、そこを指差しジスは言う。
『......此処に姫様が求める者が居ります』と。
私が求める者。つまりライル。
ジスは私が幼いルシアスだった頃に城に仕えていた人だ。
だから幼い頃の私を知っていて、そして私といつも一緒に居た彼―――ライルのこともよく知っている。
『今、此処では戦いが起こっておる......魔族と我々の軍が戦っておる戦場じゃ。
そしてあの子は、ライルは敵の大将としてこの場所に居る』
ジスはそう言って差す指をスッと地図の上を滑らせる。
動いた距離は、地図の上では数センチ。
だが実際には相当な距離。
ある一点、今度は先程指差した場所から湖のような大きな水色の部分を挟んだ先にある、緑に塗られた部分を差した。
そして『此処が、今我々が居る場所です』と、そう教えてくれた。
『こちらも魔族も、互いの命を懸けた戦いじゃ。
何があるか分からない.......行けば命の保障があるかも判りませんぞ?
それでも、貴方は行くと仰るのですな?』
ジスは本当は此処で私が思い留まることを望んでいたのかもしれない。
その希望を込めた、最後の意思確認だったのかもしれない。
そして、私はそれに首を縦に振った。
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