mirage of story











『...........では、船を用意させましょう。

目的の地に向かうには、この湖を越えねばなりませんから。
一日二日お待ちいただければ、用意も整いましょう』





やはり私の気持ちは変わらないと、ジスは一つ大きく息を吸い込みそう言った。



確かに地図を見る限り、青に塗りたくられた大きな湖を越える以外に私が行くべき場所へ辿り着けない。
そしてそれを為すためには、ジスの言うように船がどうしても必要だ。


だが一日二日というほんの少しの猶予さえ今の私には許されない。
後に後に、その考えが取り返しの付かない状況を招いてしまいそうで、今の私にはそんな時間さえ惜しかった。




一日二日、そんな日を待たずにすぐにでも向かうその方法。

船で越えていく。
それ以外に辿り着くためには、もはや空を飛んでいくしか.....。












そうか。
空を、越えていけばいいのか。

私は自分の中に浮かんだ考えにハッとした。





もちろん私に、空を飛んでいける羽根なんてない。
羽ばたくことも宙に浮き上がることも叶わない、そのことは知っている。

だけれど、船で行くよりもその方がずっと早くて。
私にはそれが必要で。




それは私のようなちっぽけな人の力では不可能なことだけど、私はその不可能を可能にする術を持っている。

......力を借りれば。
今まで忘れてしまっていたが、ずっと私と共にあった存在に。あの美しき蒼に。








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