mirage of story
『............此処からその場所までは、どのくらい離れていますか?』
私がそう訊ねると、ジスは『船を出せば半日程の場所』だと教えてくれた。
ただ湖が間を隔てているだけで、それほど距離は遠くない。
今の問題はやはり、その湖を渡る船がないということだけのようだった。
『そうですか、ありがとう』
私はそうジスに礼を言いながら、私は心の中でもう一つの存在に問い掛ける。
『行けるか』と、私の中に在る蒼に。
"他愛ない"
私の中で蒼が―――水竜が、当然といったように笑いながら答える。その答えに私も笑う。
そして私は、ジスに言った。
『自分の力で.....湖を空を渡って、彼に会いに行く』と。
何を言い出すのだろうか。
そんな顔をされた。
確かに私は変なことを言っていた。でも言っていることは嘘でも冗談でもない。
―――ッ。
私は居た部屋を見回して、その部屋で一番大きな窓のある場所へと歩く。
『水竜』
窓の縁まで来て、私はその窓の向こうに広がる空に名を呼んだ。
確かこの時はもう夜が更けてやがて明けようとする時、空は細長い雲を帯び薄明るかった。
"我が契約者よ"と、呼ぶ私に答える水竜の声。
同時にブワッと窓の外の空気が揺らいで、どこからともなく蒼く美しい水竜の姿が空間に現れた。
その光景にジスもカイムもジェイドも、そしていつも鉄仮面の表情のロキさえも目を見張って水竜に釘付けになった。
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