mirage of story
『船を待っている時間はないんです。
早く....彼に会ってけじめをつけないと。手遅れになる前に。
........だから先に行きます。
一人で、この水竜と共に』
私は手を伸ばし、水竜の美しく煌めく鱗に覆われた身体に触れた。
ひんやりとした感触が指先から身体に浸透し、少し落ち着いた気分になる。
そんな私を水竜は優しい瞳で見た。
『これが水竜.......なんと美しい姿。
本当に、この世界に存在していたとは。
........姫様、やはり貴方は我々とは違う。凄いお方じゃ』
ジスが思わずそう零した。
他の三人も黙ってはいるが、水竜を見る瞳がジスと同じようなことを語っていた。
私はその言葉と視線に軽く微笑んで、それから水竜に触れていた手を離し窓の縁へとその手を掛ける。
もう、これで会うことはないのかもしれない。
自分が今向かおうとしているのは、この世界で誰よりも私を憎んでいるはずの人の元。
そして私は、あの人が―――彼が望むのならこの命を捧げるつもりで居る。
罪滅ぼしのため。
私自身のけじめのため。前へと進むため。
きっと生きてまたこの人達にカイム達に会う確率よりも、殺されて二度と会わない確率の方がずっと高い。
出来れば生きていたいけれど、きっと彼はライルは私を―――ルシアスとしての私の仇であるシエラとしての私を殺すだろう。
自分の殺される瞬間。
もうこの時、私の目にはその光景がまるで現実のように鮮明に見えていた。
だから私は、これがカイム達との最期の別れとなることを予想した。
もう二度と、共に旅をし生きてきた時には戻れないと悟った。
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