mirage of story
苦しそうにそう言うシエラ。
傷付けたくはない。
この誰かを傷付けるためにある戦いの場で、一番不釣り合いなその言葉にライルは顔を歪める。
「.........傷付けたくはないだと?
この場に及んでそのような見え透いた媚びを売るとは。命乞いのつもりか。
笑わせるな!」
ライルが叫んだ。
その反動で剣先がぶれて、少しだけシエラの肌を掠る。
薄い皮膚が切れて血が滲むが、傷だらけの彼女にはもうそんな些細な痛みへの感覚は麻痺していた。
シエラは剣を突きつけられたままの中、地に這い蹲りながら真剣な瞳のまま彼を見つめ続ける。
大量に出血しているせいか瞳は虚ろだったが、その瞳は確実にライルを捉えようと頑張っていた。
「私は貴方を........沢山傷付けてしまった、哀しみを.....与えてしまった。
貴方の人生を、狂わせてしまった.......。
それは償い切れることじゃないことは、分かってる。
でも.......私は貴方とのけじめを、ちゃんと付けたかった」
シエラはライルを見つめたまま、途切れ途切れの言葉を何とかつなぎ合わせて声を絞り出す。
一言口にする。
その度に身体に深く刻まれた傷口からは、また新たに紅い血が流れ大地を湿らす。
シエラは、一言一言に命を削って言った。
「.......っ、綺麗事を言うな!
何の罪もないアイツを、ルシアスをお前は傷付けたんだろう?殺したんだろう?
なのに今更そんな綺麗事を......自分の命を守るためだけの薄っぺらい嘘を!
やはり人間は―――お前は生きる価値の無い最低な生き物だ」
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