mirage of story
「.....っ。
―――私は........」
何者なんだ?
今更、そんな質問を。
そんな答えの分かり切った明らかな質問。
そう答えは決まっているはずじゃないか。
だけれど彼女は答えられない。
ライルにとっては一つしかないはずのその質問の答え。
でも彼女にとっては.....一つではないのだ。
「............私は」
何者なのか、その質問に対する答えは二つ。
シエラか、それとも.......ルシアスか。
その二つは白と黒のように正反対のものであって、またどちらも偽りではない真実の答え。
今の彼女はシエラとしてライルの前に居る。
だけれど心にはルシアスとしての彼女が居て、彼女はその自分をライルのため自分自身のために隠している。
何者なのか。
その問いに対してある二つの答えはあまりに違いすぎて、その答えによってはこの状況は大きく変わることは明らかで。
でもシエラとして彼に会うと決めた彼女にとって、もう一方の答えを選ぶことは必死に考えようやく下した決意を無にすることになって。
こんなことをこの場で聞かれるなんて。
そんなことを想像していなかった彼女は、決意の揺らぎと戸惑いに言葉を詰まらせる。
「私は..........シエラ。
私は、人間で。貴方の、敵で。
貴方の、大切な人を......ルシアスの存在を、奪った最低の、生き物。
.........それ以外の、何者でもない。
私は、貴方の敵.....シエラという人間よ」
彼女は、シエラは揺らぐ決意を自分に言い聞かせるように言葉にした。
私はシエラ。
人間。貴方の敵。
自分の中にあるルシアスの想いを、グッと無理矢理押しやった。
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