mirage of story
ライル。
――――ライル。
彼女が、シエラが最後に呼んだ自分の名前が頭の中に谺し、こびり付いて離れない。
目を覚ませ。
その目を開いて、もう一度あの綺麗な水色の瞳を見せてくれ。
その瞳に、俺を映してくれ。
「――――――――ルシアス」
憎むべき相手を抱き締め、零れたのは愛する人の名。
そうか。
そうだったのか。
ライルはこの時、自分の犯していたあまりに大きすぎる過ちを―――その勘違いを知った。
「俺は...........」
自分を呪う。
今まで気が付かなかった、大切なものを想うあまり本当に大切なものを見失っていたことを。
大切な人を守ろうとして、本当は傷付けてきたという事実を。
ライルは全てに気が付くのが遅かった自分を、ひたすら呪い殺したくなった。
「ルシアスは、死んではいなかった........」
自分一人、ずっと信じてきたルシアスの生存。
それがいつの間にか五年という長い月日の間に、知らない間に否定していたなんて。
誰もが諦めても、自分だけは諦めず信じ続けると決めていたはずなのに。
何故自分は、自分が心から望んでいたその可能性を―――誰よりも強く否定するようになってしまったのだろうか。
自らその可能性を断ち切ってしまったのだろうか。
もしも自分がずっと今までその可能性を持ち続けていたのなら、きっともっと早く事実に気が付いていただろうに。
彼女を、傷付けることは無かっただろうに。
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