mirage of story
「―――っ!」
炎竜の言葉に反論も文句も言うことが出来なかった。
.........その通りだ。
炎竜の言うことは、あまりに正論だ。
今この状況だからこそ、自分自身でこの事実に気が付いたこの状況だからこそ、何故言ってくれなかったのかと言える。
だけれど炎竜に言われて過去の自分を顧みる。
ただルシアスを奪っていった人間達に対する憎悪、そして復讐心。
それだけを糧に生きてきた、醜く哀しく虚しい自分の姿。
ずっとずっと自分の中ではルシアスのためと思い、ルシアスのことを思ってきたつもりだったのに。
いつの間にか自分はルシアスではなくて、ルシアスを奪った人間へ復讐することしか考えていなかったなんて。
そんな哀しい人になってしまっていたなんて。
きっと過去の自分に、炎竜が全てを明かしてくれたとしても―――自分はきっと否定していただろう。
上辺だけで受け入れて、その事実全てを受け入れることは出来なかっただろう。
全てを教えられてもきっとそれでも自分はシエラという少女を、シエラというもう一つの彼女を被ったルシアスを傷付けてしまっていただろう。
ライルはフッと、腕の中に居る彼女を見た。
こんなに傷付けてしまったという事実と罪は消えないけれど。
それでも誰かに無理矢理気付かされて迎えた今よりは、自分自身で彼女に気付かされた今の方が大切な物を失わないで済んだ気がした。
大切な物を―――ルシアスを本当に失ってしまわなくて済んだ気がして、ライルは冷たい彼女の身体を優しく擦った。
「...........炎竜。力を、貸してほしい。
彼女を、ルシアスを―――シエラを助けたい」
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