mirage of story
"これほどまでに焦らされたのは、古よりこの時まで生きて初めてぞ?
........全く、お前の契約者も困ったものだな。炎竜"
ブワアァァァッ。
空から注ぐ声が笑い、それからその声のする方から唐突に風が舞い落ちた。
明るくなりかかっていた空を覆う白い雲のベール。
それが風により引き裂かれ、その隙間からより明るい光が零れる。
「なっ!」
空から注ぐ風に思わず目を伏せてしまう。
それでも風に引き裂かれた空の向こうに何か神秘的なものを感じ、それをどうにか捉えようとライル薄く目を開きその先を見続ける。
"............久しいな。
我が、同胞よ"
裂かれた雲。零れる光。
その向こうの神秘的な何かは、その雲も光も纏い地上へと舞い降りる。
戦場の大地。
その上に広がる空に、美しい二匹の竜。
紅と蒼。炎と水。
この世で他に一つとない、最上級の美しさを纏う人とは遥かに異なる竜の姿。
「.......水竜」
その美しい姿に、人は誰しも見とれる。
ライルも例外ではなかった。
水竜。
それはライルの大切な人の持つ指輪に宿る、蒼き竜。
自らが運命を共にする炎竜と対なる存在であり、また何よりも近い存在。
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