mirage of story











「.............水竜には感謝しなくちゃいけない。

例え知らされたものが残酷なものであったとしても、何も知らないままよりずっといい。
何も知らなければ今俺が此処にいて、貴方と言葉を交わすことも無かったんだから」




忌々しげに言葉を吐く闇に、尚も冷静に言うカイム。

その歳、僅か十八歳。
だが彼の中に垣間見るのは、それよりも遥かに上な覚悟から来る落ち着き。



闇に囚われた身の内で、本当のロアルはそんな息子の成長を目の当たりにした。
























「................判ったようなことをほざくでないぞ、小僧!

お前が真に感謝すべき相手。
それは奴ではなく我ぞ?」





カイムの動じない態度に、闇に苛立ちが芽生える。
予想とは反する反応が、面白くないのだろう。



グルアァァアッ!

低い声を一層に低く、そして見下ろすだけだった竜もその声に共鳴させるように吼えた。














「お前がこうして今生きてこの世界に存在出来ているのは、誰のお陰であるか考えてみよ!

お前が今存在出来ているその理由、お前の存在の根源を忘れた訳ではあるまい!?


取るに足らない、世界にとって何の足しにもならぬ愚かでちっぽけなお前を生かしてやっているのは他の何者でもない。
この我ぞ....っ!」





ロアルを蝕む闇の竜、創黒の竜の咆哮にカイムの居る空間がグラリと揺らぐ。


その波動が鋭い風を起こし、カイムの紅の髪を揺らす。

吹き抜ける風は刃のよう。
風の一派がカイムの頬に一筋の紅い傷跡を付けた。









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