mirage of story
「..........掻き集めてでもこれっぽっちか。
まぁ、贅沢なんて言ってらんねぇなぁ」
ハハハと笑い、ジェイドは人影に手を振る。
するとそれに気が付いた何人かが振り返り、それに釣られて続々とジェイド達の方を見る。
そんな人影をジェイドの後ろに居るシエラとライルは、改めて凝視する。
見て分かるのは、全員が戦いの様相をしているということ。
それぞれが防具に身を包み、それぞれが武器を持っている。
だけれどそれは全員が仲間であることを示すような統一された様相ではなくて、大きく二つに分かれていた。
「あれは......」
ライルは人影に万遍なく視線を向け、それから呆然と言葉を漏らす。
人影とジェイドとシエラそれからライルの距離は縮まり、お互いの顔が分かるまでになると集まる人影の中の何人かもライルを見て何やらざわつくのが分かった。
ざわつく声。
そんな中で口々に呟かれるのは"隊長"という単語。
呟くは人影の中でライルと同じ軍服を纏う者達。
つまりは魔族である者達だった。
そしてそれ以外のもう一方の派閥。
それはそんな魔族達と殺し合っていたはずの、人間達。
この世界でもう二度と交わることは無いと思った水と油のような二つ種族が、互いの命を奪い合うこてなく一同に会す。
これが本来在るべき姿であるのだけれど、とても異様な光景に見える。
そしてそんな異様な人の集合体に、ジェイド達は合流した。
「それにしても凄いもんだね、竜の力ってのは。
ほんの数分でこの戦場に居る全ての兵達を―――しかもあんだけ長い間お互いを殺し合ってた両者を大人しくさせちまった上に、まぁ物の見事に大集合だ。
これこそ、人には出来ない仕業だねぇ」
手を大きく振りながら、軽く辺りを見回す。
見ればよく知る顔。
ジェイドは昔の仲間と今の仲間、知る顔をグルリと見て確認した。
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