mirage of story
時が経つのは早いものだ。
あの頃まだほんの子供で世界のことなんて何も知らないままにただ生きてきたシエラとライルは、今ではこうして世界と向き合い立っている。
あの頃まだ若々しく凛々しかったジスが、今では嗄れた老人となって立っている。
ほんの少し前のことだと思っていた。
世界が出来てからの歴史に比べれば、そのような月日など他愛もないものだと思っていた。
だれけど今こうして過ぎ去った月日を形にして前にすると、その過ぎ去った時間は大きくまた濃厚であるものだったのだと彼等は思い知らされる。
「...........君も随分と大人になった。
たった数年―――たったそれだけの時間で人もらそして世界もこんなにまで変わってしまった。
まさか自分が生きているうちに、このような世紀末が訪れようとは夢にも思ってはいなかったな。
ハハッ、長生きはしすぎるものではないね」
幼さが逞しさに変わったライルの姿を、ジスは心から喜んでいた。
つい先程までは敵味方の大将。
だがその立場さえなくなれば、ジスにとってライルは幼い頃から知っていて自分が親のような感情になる存在。
まるで孫の成長を喜ぶ祖父のように、ジスはライルとそしてルシアスの姿を老いた目に焼き付けていた。
「お久しぶりです、ジス様」
完全にジスとの記憶が蘇ったライルの脳裏。
シエラが言うように、城を抜け出して怒られた記憶もちゃんと蘇ってきた。
それも何回も。
思い出した記憶の中で、ライルは過去の自分と共に申し訳なさでジスに頭を下げる。
ッ。
だがそんな記憶よりももっとずっと濃く、ライルの脳裏にはっきりと蘇る記憶がある。
それはルシアスと、シエラと一緒に過ごした日々の記憶ではなくて、もう少し先の記憶。
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