mirage of story











「貴方が人間達の軍を率いていたなんて........。


覚えていますか?

五年前、あの戦乱の最中でルシアスと生き別れてから俺はルシアスを捜すために国を飛び出しました。
国も不安定な時、そんな時に国を放って飛び出すなんて皆からは反対されて......でもそんな時に貴方が俺の背を押してくれたんです。

でもそれから数年経って俺が何の成果も無く国に戻ってきた時、もう貴方は居なかった。
城を呼ばれ行った時には、玉座に座るロアルだけでした」



「..........」





「ずっと貴方の行方は気になっていました。
ただ、色々なことがありすぎて貴方を捜すことが出来ませんでしたが。

―――あれだけ国を魔族を想っていた貴方が、どうして国を離れたのですか?」








ライルは問う。
ジスは穏やかに笑ったまま、ライルの問い掛けをただ聞く。

変わらぬ表情。
だがフッと一瞬だけ、ジスの眉が歪む。




.........。

周りの騒めきはいつの間にか治まっていた。
ただ視線だけが二人の会話に向けられていた。

















「................私も色々と話したいことはある。
だが、今はその時間はない。


積もる話は全てを終わらせ、世界の危機が去ったという祝福の杯を交わす時にでもゆっくり話そう。

今はやらねばならぬことのために、こうして魔族も人間も皆集まっておるのだからね」





集まる視線にジスは目を配る。
ライルはその視線にハッとして自分の発したジスへの問いを飲み込んだ。











「そうですね........今はそんな場合じゃない。


―――策を練りましょう。
俺達人が、あの強大な力に勝つための策を。世界を守るための策を。

話は全てが終わった後に、いくらでも」









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