mirage of story










この状況、世界が終わらされようとしているこの状況。

誰がこの場に居て誰がこの場に居ないのか、誰が生き残り誰が死に絶えたのか。
それすらも分からない。



この状況を前に、ついこの前まで共にいた者の誰が居なくなっていようと決して不思議なことではない。

人の群の中見える限り見渡したところで、ライルにもそれは分かる。
ライルが知っている者、同じ部隊の者が全員この場に居るということは絶対に無いとライルは悟っていた。



戦場という場所。
軍人は、兵士はいつ死ぬか分からない。

いつ仲間が死ぬか、いつ誰が何処で殺されるか分からない。
だからライルには、今この状況で誰かが居ないということを取り乱さずに受け入れる心得があった。





誰かが居なくなる。
それは今の状況では当然とも言えること。

それは例え軍人や兵士でなくとも、ずっと剣を握り戦いの中に居たシエラにも分かっているはずだ。
彼女にも心得はあるはずだ。










「..........」




なのに、彼女の焦燥の色はどんどんと増していく。




どうしてか?
彼女が捜すその誰かがこの場所に居るという確証がまるで彼女には在ったように、彼女は捜すのを諦めようとしない。



そのような確証はどこから.......。

そう考えを巡らせ、焦燥の色に顔を染めるシエラをライルは見る。

















(.......あれ....)



見つめる。
すると心の中に小さな棘が引っ掛かるような、ごく些細な違和感を感じてライルはハッとする。







視線の先のシエラ。
彼女の水色の瞳にオレンジがかった茶色の髪、何にも変わった所はない。


だが、何かが違う。
.......何か、物足りない。








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