mirage of story









グヴアァ―――ッ!

ワアァア―――ッ!


竜と人。
二つのその声が同じ大きさで重なった。




拮抗するそれは衝撃となって跳ね返り、戦場を激しく揺さぶる。

目に見えるほど、大きな衝撃。
それでも人は、ちっぽけであるはずの人は闇に真っ直ぐ立ち向かった。


その姿はもうとてもちっぽけであるとは言えず、勇敢で竜と並ぶ程に大きな存在。
気迫はもうすでに、竜がそして人自身が頂点としていたところを遥かに越えている。

人は命をそしてそれ以上のものを、彼等の持ち得り全てを掛けていた。







この広い戦場の何処かと何処か。
繰り広げられるは二つの戦い。


竜の姿をした闇を前に剣を取るロキやジェイド、そして生き残りの戦士達。
残酷な真実と戦う、シエラ達。

両者は姿は見えなくとも戦う相手は同じ闇。




一つの闇に勝とうとも、もう一つの闇に敗れれば世界が辿る終焉への結末は同じ。

目の前の敵を前に、後は互いに仲間を信じるしか無い。
繋がる絆を信じるしか無い。

















"此処で手を下せば、またあの時のように同じことを繰り返すことになる。
これは人がその手で決着をつけねばならぬ問題だ。

.........人よ。
君達の手で、どうか乗り越えるのだ"



見守る瞳に、人は戦う。

人自らが犯した罪を、生きて償うために。
己を見つめ直し、世界に本当の平和を齎すために。


人と世界の行く末を見守る光り煌めく竜の二つの瞳には、この戦場で繰り広げられる二つの戦いのその両方が克明に映し出されていた。







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