mirage of story
〜4〜






互いには見えぬ二つの戦い。

一方で強大で巨大な創黒の竜という闇に、人という小さな存在であった彼等が全てを掛けて剣を取る。
その一方で闇に魅入られた哀れな人が、シエラ達と対峙する。



敵は一匹と一人。
だが、契約に結び付けられた彼等は一心同体。

一つの戦場で別れた彼等は、人という存在を根絶すべくそれぞれに蠢く。






一方が力が激しく火花を散らしてぶつかり合う中で、もう一方では極めて静かな時間が流れていた。

..........。
だがそれは決して心地良い静寂ではなくて、不気味で且つ際どい静寂。




戦場の喧騒から隔離された異質な空間で、別れる影。

シエラとライル。
カイムと、そしてロアル。


本来なら一対三。
ロアルだけがこの空間では一人弾かれる存在で、その他の三人の立ち位置は同じであるはずだった。

だが今、四者の間に迸る亀裂はそんな予想とは全く違う位置でこの空間を分かつ。
空間を分かつその亀裂が、今此処を静寂に導いたその元凶だった。














「......................俺はあの人の、ロアルの息子だ。
あの人は俺の父親だ」



彼女が、シエラが知る由も無かったカイムの告白。
先刻告げられた、知るには遅すぎた残酷な真実。


その真実がカイムの口から、彼女の大切な人の口から放たれる。

背景には、その光景を前に満足気に笑うロアルという闇の色。



苦しそうに顔を歪めるカイムを前に、シエラは動揺と衝撃に目を見開く。
ライルもその様子を衝撃を隠しきれないように見守る。







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