mirage of story
「カイム一体何を言って....。
まさか、本当に?」
「...........あぁ」
カイムは確かに父を捜していた。
幼い頃に彼と彼を母親を捨て、姿を消したという彼の父親。
人間の母と、そして魔族の父。
人間と魔族が対立していたこの世界では蔑まれる環境で生まれたのが、カイム達のような者だった。
戦いの色が深まる前までは普通の親と子だったはずなのに。
戦いが深まれば父は妻と子を捨て、もはや敵同士と成り果てた。
だけど幼かったカイムにはそれが理解出来なくて、シエラと共に外の世界を旅してそんな中で父の姿をいつも捜していた。
捨てたことを責めるためではなくて、ただその理由を父親の口から聞くために。
ずっと捜していた。
ずっと会いたかった。
なのに、待ち受けていた再会はあまりに酷。
カイムはシエラと旅する中で、彼女の想いや自分自身の想いで人間でも魔族でもない立場から人間側へ―――魔族を憎しみ恨む側の人間としての括りへと立ち位置を変えた。
魔族という存在自体を憎しみ殺したいと思う訳ではない。
ただただ残酷な戦いを続けようとする魔族を止めなければいけない。
何の罪も無い人が傷付き続けるこの世界を変えるためには、その元凶を消し去らねばいけない。
カイムは人間という立場の上でシエラという仲間と共にそう考え、そのために行動してきた。
戦いを深める元凶である魔族達を........ロアルを討つために、動いてきたのに。
討つべきその相手を目の前に突き出された真実。
望んでいたはずだった再会。
決して望まなかった再会。
討つべきその相手は、自らが求めた人。
大好きだった幼き頃の父と今誰よりも憎むべき相手の姿が、皮肉にもピタリと重なってしまった現実。
.