mirage of story









ロアルの頭の中では、脆い建前だけの絆がガラガラと音を立てて崩れ去る様が鮮明に構想されていたというのに。

この場が絶望と闇に飲まれる様を、克明に想像し身震いしていたというのに。


終わりゆく世界の中で底のない絶望へと、突き落としてやろうと思っていたのに。
苦しみと憎しみを抱えたまま、この世界汚れてしまったと共に消し去ってやるつもりだったのに。









「.........何を戯けたことを」



これでは、計算が合わない。
音を立てて壊れたのは、彼等の絆ではなくて歪みきったロアルの、闇の計画。

思い通りではないこの状況は至極気に食わないのか、笑みを完全に消し去ったロアルが吐き捨てる。










「世界の上っ面しか知らぬ無知な小娘が、笑わせてくれるわ。

浅はかな考えばかりで事の深くまで知り得ない、そんな愚かな人の性がこの世界を駄目にしたのだ!

誰が誰であるだとか自分は自分であるなどという.......そのような下らない気休めの意識など関係は無い!
ただ重要なのは、誰がどのような役割を与えられ生まれどのような理由で存在しているかなのだ。

..........お前はまだそれが何も解っていないのだよ、小娘」




シエラの反応に呆然とし、何も言えないカイムを間に挟み続く会話。

低く悍ましい声に、今度はまた違った笑いを含ませながらロアルは言う。


その笑みはシエラを、いや人類全てを嘲笑い蔑むような意味深な笑み。
向けられるその笑みの醜悪さに、シエラの中の怒りに似た感情が沸々と沸き上がる。









「誰がどのような役割や理由で存在しているかなんて、そんなこと私達は自分で決められるわ!

人はただ決められた道を歩むだけの駒じゃないのよ。
私達は自分達の人としての意思で―――――」



「それが浅はかだというのだ」


「っ!」








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