mirage of story
「人が歩む道はお前達の意思の上に成り立つものではない。
傲慢な人の意思の上にこの世界が成り立っているというのなら、私が.....我が手を下すその前に世界は滅んでいた!
人は予め果たすべき役割を持ってこの世界に存在する。
それはお前達の意思でも何でもない、その役割こそが予め定められし存在理由。
人が無知なだけのことよ。
愚かな人は自らの歩む道が全て自分の意志の元に成り立っていると信じて止まない。
迷い決断を下した行動も、お前達が意思と呼ぶものも抱く感情も全ては古より続く筋書きにより定められたものだとも知らずに。
人は、本当に愚かよ」
........。
笑うロアルの声が、言葉を重ねるごとに変わっていくのが分かった。
ぶれる声は二重になり、もうその声は人の声で無くなる。
姿はロアルという人の姿。
だが中身はもうすでに人でない。
ロアルという男はもう、膨大な闇を湛えるただの器でしかない。
もうロアルはロアルではない。
そのことを知っていたカイムは唇を噛み、知らなかった彼等はそれをようやく悟る。
「―――小娘、お前も同じぞ。
お前もこの世界の定められし筋書きの一つに過ぎん。
それを自分の意思というか?
たかが人の存在で自惚れるでないぞ!
お前の役割は人に汚されし世界を壊し再生するための道の通過点。単なる踏み台。
人間と魔族という人の下らぬ争いのきっかけとして生まれ、争いと分裂で世界を断つ楔となる―――それが小娘、お前の役目。
........お前はこの汚れた世界を終わらせるための、ただの駒ぞ」
闇はそう吐き捨て、視線をシエラからその隣で傍観するライルへと移す。
闇色の視線。
瞳が重なった瞬間にゾクッと悪寒が迸った。
「その争いに巻き込まれ憎しみに暮れ戦い争いを深める――――それがライル、お前の役割。
そして戦いに巻き込まれしお前の仲間達は、魔族も人間もその境は関係無くこの戦いという舞台を盛り上げ彩るエキストラ。
どれも全てはお前達がこの世界に生を受ける前から決められている、抗えない使命であり歩む道」
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