mirage of story
「........下がって下さい.....ライルさん。
貴方は強い―――だけれど、相手は決して貴方一人で適う相手じゃない」
その動きを察して、カイムは倒れ込んだ身体に力を込めて起き上がる。
その行動にシエラは真っ青になるが、それを穏やかに制してカイムはライルの方を向き直した。
「その身体で何を言っている!
お前こそその身体では戦えないだろう!?
この状況で勝利の確率は低いとはいえ、お前が戦い勝つ確率よりも俺が戦って勝つ確率の方がずっと―――」
「もしもっ......もしもそうだとしても!
貴方には負ける確率だってあるでしょう!
俺には......この闇との未完結な契約の途上で生かされている俺には、その確率は無いんです!」
「―――っ!」
カイムの言葉に、振れるライルの背。
自らの運命を完全に受け止めたカイムの言葉。
彼の哀しく強い言葉に、ライルは言葉を詰まらせる。
ッ。
流れ出る血に構わず立ち上がり再び剣を取るカイム。
痛みを堪え唇を噛み、剣を倒すべきその相手に―――闇に侵された父親に向ける。
そして自分とシエラを守るようにして立ちはだかるライルを制すようにして、一歩前へと進み出た。
「............貴方には、シエラを守ってもらわなきゃいけないんです。
これから先、ずっと。
もしも貴方がこんな所で負けてしまったら―――誰が彼女を守るんです?
ライルさん、彼女をずっと守っていく事が出来るのは貴方しか居ないでしょう?」
キイィンッ。
剣をしならせる甲高い音。
血塗れで大地を濡らし、それでも立ち上がる紅はそう言って笑う。
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