mirage of story
この世界は、人の力によって再び生かされるのだ。
闇がちっぽけで愚かだと蔑み、滅ぼそうとした人の力によって。
人の世界は、これからも続いていくのだ。
闇の竜はそう確信し、自らの惨めさに哀しくその闇色を揺らす。
創黒の竜と呼ばれたこの闇色の竜もまた、世界を愛し自らが愛した世界の形をただ取り戻そうとしただけなのに。
望んだ世界の姿は違えども、世界を愛する気持ちは他の水竜や炎竜―――そして人と同じであったはずなのに。
終焉を迎えたのは哀しい闇だけ。
哀しい闇に飲まれた、哀れで美しい愛で繋がれた親と子だけ。
人はこれからも、この世界に生き残る。
人は―――勝った。
"...........見よ、我等が契約者達よ。
闇が、晴れていく。
君達の見えないところでもまた、君達の仲間が奴の力に打ち勝った。
今度こそ君達人は、自らの手で生き抜いた。
―――人は、勝ったのだ"
何処からともなく聞こえる光を纏う竜の声。
きっと見えないところでずっと、彼等の運命の行く先を見守っていたのだろう。
水竜と炎竜の声のその声に人は、シエラとライルはその事実を知らされる。
ハッとすれば周りを取り囲んでいた空間の隔たりは消え失せていた。
一つに繋がった空間には、もうあの濃厚な闇は無かった。
消えていく闇に、戦場から......世界から歓声が上がった。
.