mirage of story











ワアァァアッ!

傷だらけの大地も、歓声に喜ぶ。
壊され消えかけた世界全体が、祝福の色の纏った風に包まれる。




世界の全ての想いが一つに。
もう完全に、過去を支配していた人の―――人間と魔族の隔たりは無い。

生き残った彼等も戦いに散った仲間も、勝利という文字に一つになる。


















「...............よかった。
これでもう、安心だ」




息絶えた闇に突き立てられた剣。
ぐったりと力を失った闇をそのまま支えるように重なり立つ影。


歓声が取り巻く世界で、ただ一つ落とされる哀しげな声。

歓声に簡単に掻き消されてしまうような小さな声。
だけれど、その声は彼等には―――シエラとライルには確と聞こえた。



声のする方、カイムの元を見れば背を向けていたはずの彼が振り返り笑う。
穏やかに笑う。








「っ!」


「お前.....身体が」



その笑顔に、取り巻く歓声の中で息を飲む。




分かっていた。
彼から、カイムから知らされた残酷すぎる事実は忘れるわけは無かった。

ほんの少し前の会話。
心臓を突くような衝撃。



そうだ。
闇の終わりは、彼の終わり。
彼の、カイムの存在の終わり。

契約の終わり。
契約で生かされた命の終わり。







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