mirage of story
本当に、まだ俺の存在はあの世界に残っているというのか?
もし本当だとすれば、一体何処に?
俺の疑問に揺らぐそんな心を察したように、水竜はまた口を開く。
"..........君が仲間と慕った、本当に心が繋がり合った者達の記憶の片隅。
ほんの一握りしか居ない、たった数人の記憶の片隅に。
君はまだ生きている。
例え世界が君を忘れ去っても、その者達の中では君の存在は完全には消されなかった。
闇は.....その者達から君の存在を完全に奪い取ることが出来なかった"
それは、彼女達のことを指すのか?
自分が仲間として慕った者達、心で繋がり合った者達というのは。
彼女―――シエラ。
そして戦いの中では敵であったあのライル、そしてジェイドやロキ。
彼等のことだ。絶対に。
彼等の中に.......まだ自分は、俺は生きているというのか。
水竜の声にその事実を認識した途端に、じんわり胸の辺りが熱くなる。
きっと自分は今、とても嬉しいのだろう。
こんな感覚になったのは、この場所に来てから初めてだ。
記憶の片隅でもいい。
どんなに小さな欠片であったとしても構わない。
ただ。
ただ、自分の存在が大切な人達の中にどんなに小さくとも生きていたということが嬉しくて堪らない。
完全に思い出してもらいたいとか、そんな贅沢な欲望は不思議と沸かない。
ただただ嬉しかった。
"....................やはり君は、あの世界で生きるべき人だ"
ッ。
そんな様子が可笑しかったのか、フッと笑いを零す水竜の声が聞こえた。
煌々と瞬く光の中で、美しき竜が微笑んでいるのが判った。
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