mirage of story




エルザの言葉と、思い出された現実が重なり合う。






「シエラ、信じたくないのは分かる。
―――だけど、これが現実なのよ。」





もうシエラの大切な人たちは、誰も居ない。
今頃は村も燃えて、最後には何もなくなってしまうだろう。
 
 
 
 
 
大切な人たちも.....
唯一の故郷も消えてしまった現実なんて哀しすぎる。



――――それが本当の現実ならば、もう.....。









(......もう私も....死んでしまいたい)






そうすれば、もう哀しみのない世界へと行ける。
このままずっとエルザといっしょに居られる。








「――――なら私もみんなの所へ.....」




「それはダメよ―――」







シエラのその言葉をエルザの声が遮った。
哀しい....けれど強い意志の籠もった声で。














「どうして!?
―――どうしてみんな私を置いてくんだよ。

私.....みんなが居ない現実になんてもう」






シエラの瞳から涙がこぼれる。










「―――もう戻りたくなんかないよ。ずっとみんなと、母さんと一緒に居たい。
そのためだったら死んだって構わない!!」






涙で霞む視界で、エルザを見た。










「―――もう、一人は嫌だよ....母さん」







その言葉に、エルザはそんなシエラの手をとり、ギュッと強く握り締めた。

だが、それはほんの一瞬のことでエルザはスッとその手を離した。




 



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