mirage of story
(......)
「そうだ、ここに居たアイツらはどうしたの!?
.......あの魔族たちは」
そうだ。
さっきまでは此処にライルとあのロアルが居たはずだ。
シエラの持っている指輪を狙い、シエラの大切な人たちを死に陥れた張本人。
そして、このシエラの故郷に火を放ったはずの張本人たちが。
「........あいつらなら、俺が追い払った。
大丈夫だよ、シエラ。
もうこの村には居ないと思うから」
カイムは感情を押し殺した声で言った。
そう言う、カイムの表情は何だか暗く哀しく見えた。
周りの炎の明るさに陰って見えただけかもしれないが。
(あ.....私のせいで魔族を討つ絶好の機会を、失っちゃったから)
シエラはそんなカイムの様子に気が付き、少し俯き加減にカイムを見た。
「ごめん.......せっかくアイツらを討つチャンスだったのに。
私のせいで、逃しちゃったよね」
「え......あぁ、違うんだ。シエラのせいじゃないんだ。
少し嫌なものを見ただけだよ。
気にしなくて、大丈夫」
カイムは一旦、そこで口を閉ざした。
「いや....本当に何でもない、気にしないでいいよ。
それより.....俺たちもここが早く出ないと。これ以上の長居は、本当に命に関わる」
その言葉に、自分たちの置かれた状況しようとシエラは周りを見回した。
村を包む、炎の勢いが激しい。
村一面に熱気が纏われてることに今、気が付いた。
自分達は、此処まで追い詰められていたのか。