mirage of story
王の拍子抜けした疑問の声も聞こえていないのか、ルシアスが続ける。
「実はね、ずっとまだかなぁって思ってたのっ!
わぁ、なぁに?
新しいお洋服?それとも髪留めかしら?」
「ちょっと待ちなさ....」
王の制止の声が飛ぶ。
だが、それは虚しくもルシアスの声の後ろに消えてしまった。
「あ、そいえばライルからもまだ貰ってなかったわ!
いつも一番最初にくれるのに......あ、まさか忘れてる?」
(.....え)
唐突に話を振られ思わず目を見開きルシアスを見るライル。
焦る。
その話がさっき渡したはずの誕生日プレゼントをもらってないというのだから、尚更焦った。
まさかさっき渡したことを忘れてる?そう思い、ライルは口を開く。
「え、さっき渡したよ?」
思わずきょとんとする。
「え.....。
さっき渡したって、まさかあのお花が?」
ライルの言葉に暫らく本気で考える素振りを見せ、ハッとしたようにルシアスは言う。
本気で驚いた表情。
そんな表情が返ってくるとは思っていなかったライルは、余計にきょとんとしてしまう。
「そ、そうだけど?」
「えぇえっ!もっと可愛いものとかなかったの!?
お花一本が誕生日プレゼントなんて....あ、もしかして途中で考えるのめんどくさくなって適当に選んだでしょ?
酷いんだから。これだからライルは.......」
「ルシアスっ!いいかげん、少し黙りなさい!」
話続けるルシアスを王の一声がとめた。
ルシアスは話し出すとなかなか止まらない。そのことが分かっている王は、堪り兼ねて止めに入った。
一瞬の沈黙。
そして王は小さくため息をつき、再び口を開いた。
「まったく.....お前はもう少し姫らしくならんのか?
あと人の話はちゃんと聞くように、いつも言っておるだろう!」