mirage of story
「――――私は、お前がこの指輪の契約者......選ばれた者ではないかと感じていたんだ。
ずっと前からね」
(.......俺が指輪の契約者?
強い魔力を持った.....選ばれた者だって?)
聞き間違いではないかと疑った。
自分が、そんな強大な力を持つ指輪の契約者だなんて。強い魔力を持つ、選ばれた者だなんて。
そんなことあるわけがなかった。
だって、ライルには。
「........俺が、指輪に選ばれた者だなんてそんなこと、あるはずないです。
―――だって俺には」
ライルの手に力が入る。
握られたこぶしは、ギュッと硬く結ばれた。
「だって俺には――――魔力がないんだから」
そう言うライルの顔は、今にも泣き出しそうなほどに歪んでいた。
そしてライルは涙を堪えた声で、続ける。
「王様だって知ってるでしょう?
俺が、魔力がない出来損ないだって....いうことを」
そう。
王は知っているはずだった。
ライルは生まれながらにして魔力が全く備わっていなかったことを。
その変えようもない事実を。