mirage of story
王の瞳は、優しかった。
魔力がない。そう馬鹿にするような瞳ではなく。
からかっているような瞳でもない。
.......ライルを認めてくれる、信じられる瞳だった。
「さぁ、はめてごらん。
......これがきっと、お前の力が目覚める――――きっかけとなるだろう」
自分に差し出された、王の手の中の指輪。
ライルは、その指輪を涙で霞む視界の中で探りあてて、自分の手に握り締めた。
そして、指輪を握ったこぶしで涙を拭う。
(――――俺にだって、きっと魔力が....力がある。
いや、絶対にある)
ライルは指輪を、そっと指へと持っていく。
(―――もう誰にも.....出来損ないだなんて言わせない)
「........炎竜の指輪、俺に―――力を」
ライルと指輪が一つとなった。
その瞬間、ライルの周りから、音も景色も色も何もかもが消えた。