mirage of story
「......お前が謝る事はない。悪いのは、全てあの人間どもだ。
常に、悪は人間....善は魔族。
魔族であるお前が、負い目を感じることはないのだ」
ロアルは自らの前に跪くライルを、暫くの間見つめて
それからそう口を開いた。
「まだチャンスはある。
我々魔族には────お前の力が必要なのだ、ライル」
ロアルの手が、そんなライルに差し伸べられた。
俯き、地を掴んでいたライルはその手に顔を上げる。
悔しさに滲むライルの瞳の向こうに見えるその手は
何だか温かく....偉大に見えた。
「──────ありがとう....ございます」
ライルは涙で霞む視界の中で
自分に差し伸べられたロアルの手のひらに、自分の手のひらを合わせた。
「.......さぁ、一旦城に戻る。
ここから逃げた奴らの足取りなど─────限られておる。
見付けることなど、我々にかかれば容易いことよ」
ロアルは口元に薄く笑みを浮かべながら言う。
「────新たな作戦を.....練らねばな」
そんなロアルの笑みには
陰謀と歪んだ愉しみが籠められていたことに
ライルは気付きはしなかった。
「.....俺、馬の準備をしてきます。
丘の方で休ませてあるので.....少し待っていて下さい!」