mirage of story
また知らない言葉。
二人は自分達の無知をまた思い知らされ気持ちが沈む。
「........竜の石というのは、古くからある石の欠片のことでしてな。
この街だけでなく、世界の幾つかに点在するようです。
古の時代に世界を堕とそうとしたある一匹の竜が封じられる際、その強大な力が分散され結晶化されたものだと聞きます。
竜の石に封じられるは禁忌の竜―――闇の竜の力。
その力が籠められた石を全て一つにすれば、封じられし闇の竜が世界に復活する......そう云われ語られる忌まわしいものです」
老人は説明を付け加えた。
竜の石。
それは実はロアルがあの日、瓦礫の山と化したシエラの故郷で血眼になって探していたものの正体。
闇の竜を、蘇らせる石。
そんなものがあるとは知らなかった。
ということは知る者ぞ知るような、言わば伝説のようなものなのかもしれない。
そもそも竜というその存在自体が、今の世界では伝説なのである。
その力の宿る石と言われても、信じる者は少ない。
だがロアルが人間の街や村を壊して廻っている真の理由、それが"竜の石"らしい。
その石の正体が果たして本当にそんな恐ろしい力を持つのかは判らないが、それにロアルが関わっているのならば見過ごすことは出来ない。
"竜の石"。
その存在を二人は強く心に刻んだ。
「私達は争いは好みません。
ですから、私達は取引に応じたのです。
あの石を渡すだけで、安全が保障されるのなら渡してもよい。
そう思ったのです」
「?えっと.......その石を渡したのですか?
じゃあ、街は何故こんなことに?
辻褄が合わないように思えますが?」
今聞いた話を整理しよう。
ロアルが差し出した手紙。その内容。
そしてこの街が出した答えと、行われた取引の事実。
石を渡せば助かるはずの街。
だが現実は.....。
「────甘かったのです。私達の考えが」
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