mirage of story
そして、シエラに向かってスッと手が伸びる。
自分の前へと伸びてきたその手。
頭で考えるより先に
シエラは、その手を無意識のうちに.......握っていた。
シエラの心は、何処かでこの差し伸べられた手を求めていたのかもしれない。
────その手から伝わる温かさが、シエラの青い瞳の奥を刺激した。
「──────カイム......」
ついに耐えきれなくなって、涙が零れる。
「無事でよかった.....シエラ」
涙を流し手を握るシエラを前には、安堵の表情を浮かべる、カイムの姿があった。
シエラの瞳に映る
息を切らし、手を握るそのカイムの姿。
ちゃんと....ちゃんとその姿を見たいのに、止まらない涙のせいで
少しだけ歪んで見えて、残念に思った。
だけどそれ以上に
なにより嬉しさが込み上げて、掴んだその手を強く握った。