mirage of story
〜13〜







(........一体どうなっているんだ?)




仲間の姿を求めて、廃墟の中を疾走していたカイムは
目の前の非現実的な状況に、思わず足を止める。






激しい揺れ。迫る黒い風の渦。

見えない仲間の姿。



この街の異変に気が付いたのは、ほんの少し前。

自分の故郷を消した因縁の黒い風と、不気味に微笑むロアルの姿。



その時見た光景が、頭から離れない。






ロアルの去り行く背中を見て、自分たちの置かされた状況の深刻さに、いち早く気が付いたカイム。

手遅れになる前に街の人たちを、安全な場所へ避難させた。



全ての街の人の背中を見送り、後は自分も抜け出すだけ.....そう思っていた。





─────だが、一番に安否を知りたい相手の姿をまだ見付けていないことに
彼は気が付いた。


.......仲間。



一番守らなきゃならない、仲間の姿が.....見当たらなかった。






黒い風は迫り来る。
死の匂いが次第に濃くなる。

これ以上留まれば、命の保証はない。





焦燥感が、カイムを駆り立てる。
 






 
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