mirage of story
自分に向かってきていたはずの瓦礫の残骸。
それが、自分の握る剣に触れるか触れないかくらいの所で止まっている。
まるで時が止まってしまったかのように。
舞い上がる砂埃までもが、綺麗に空中に静止していた。
「─────何が.....」
カイムは構えた剣を下ろして
そして崩れ落ちてきた、空中で静止する瓦礫の破片に手をやり、辺りを伺う。
自分以外、動いているものは......見当たらない。
(─────これも、魔族の......奴の仕業なのか?)
一瞬、カイムの頭にそんな考えが浮かぶ。
手を掛けた瓦礫の欠片からは、パラパラと白い粉が毎落ちるが
その白い粉も、まるで宇宙を漂う塵の如く宙に漂う。
(.....でも、おかしい)
ロアルが自分たちの命を狙い、この地に来たのなら早く自分たちを始末したいと思うはず。
だったら、このようなことを.....時間を止めるなんてことする理由が分からない。
そもそも、魔族は人間が持たない力....魔力を持つというのは知っているが
時を操るなんていう、人知を越えたことまで出来るとは思えない。
そう考えると、この現象がロアルの仕業である可能性は、無に近くなった。
(じゃあ、これは一体?)
カイムの頭の中が、疑問の渦に飲まれる。
だが、その疑問は晴れない。
そのカイムの疑問は、人の頭で解決出来る域を裕に越えていた。
──────カサッ。
「.....ッ!?」
唐突に聞こえた何かの音に、カイムの意識は引き戻された。