mirage of story
 
 
 
 
 
 
 
 
カイムは、ネビアに覆い被さる崩れた廃墟の壁に手をかける。





─────グッ。



そして思いっきり力を籠めて、壁を持ち上げる。



だが、そう簡単に持ち上がってはくれない。

でも、諦めるわけにはいかない。カイムはもう一度力を込めた。






────グイィ....ッ。


ネビアに覆い被さる壁の残骸は、ボロボロと破片を落とし埃を立てながら少しずつ.....少しずつ上へと持ち上がる。




だがやはり、壁は思いの外重くてなかなか思うように上がらない。

それにカイムは、あんまり力を自慢出来る程強くはない。




ほんの少しだけ上に上げるのだけで......正直、結構キツかった。









「────カイム、後少し!
後少しでこっちに引っ張って来れるから、頑張って!」




「.......あ..ぁ....分かった────ッ!」





カイムはシエラの言葉に、力を振り絞り応える。

強い力を籠めて、思い瓦礫の壁を支えるカイムの手のひら.....そこから一筋、血が流れ落ちた。






──────グ....ググッ。



また壁が、ほんの少し上に持ち上げられる。




その機を逃さずに、シエラは精一杯の力を籠めて、ネビアの体を自分の方へと引っ張った。







──────ドン....ッ。







 
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