mirage of story
出撃命令。
明らかな程空間がどよめく。
「っ!
す、すぐに準備を!」
予想だにしなかった出撃命令。
その言葉にこの猛者たる血の気の多い男達が食い付かないはずは無い。
ッ。
今までライルへの不満を漏らしていた廃れた瞳に、戦いへの興奮の色が濃さを増す。
「直ちに他の隊員等に召集を掛けます!
よし、行くぞ!」
何だか男達は生き生きしていた。
興奮を抑えきれない。
そういった様子でライルに一礼、そしてこの場に居ない他の隊員達を召集すべく部屋の外へ駆けて出て行く。
ッ。
慌ただしく遠ざかる足音達から察するに、もう暫くすれば彼等の召集が行き渡り軍議を始めることが出来るだろう。
「ふぅ.........そんなに戦うことが好きなのか。
俺には理解出来ない」
慌ただしさ治まった部屋。
ッ。ライルは先程まで占領されていたまだ嫌に温もりの残る椅子に腰掛けて溜め息を落とす。
「..........それにしても本当に鈍い。
俺が何も気付いてないって本気で思ってるのか」
そして彼は独り言のように呟く。
つい先程までこの場所で展開されていた自分に対する愚痴や不満。
まるで彼はそれを全て聞いていたかのように、冷めた視線で男達の居た場所を見る。
―――――。
そう、彼は知っている。
隊員達が自分に抱く良くない感情も不安も。
同じ国の同じ軍の同じ部隊に居るのだ、嫌でも耳に入る。
前はいちいち頭に来て悔しがったりもしていた。
だがそれは無意味でありいちいち頭に来て隊員達を叱りつけてみたところで何も変わりはしないし、それどころか一層に自分の立場を悪くしてしまうだけだと悟った。
だから聞こえてきても彼は聞こえていないふりをする。
何にも反応を示さないようにしている。
何とも大人な対応である。
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