mirage of story
制止の言葉。
その声に出し掛けた手を止めて振り返った。
「どうして?
人が倒れているのよ、助けなくちゃ!」
真剣な眼差し。
自分の手を制止させた声に向ける。
「でもね、ルシアス姫様。
あの人はね、その.........助けなくてもいい人なんだよ?」
視線を向けられた子はそう口にする。
――――。
あまりにサラリと言われたその言葉の意味が、彼女には理解出来なかった。
「?でも人が倒れてるんだもの。
どうして?助けなくても良い訳が無いじゃない」
『うん.......えっと、えっとね!
その人はね、助けても意味の無い――――――助けるその価値の無い人なんだって。
母ちゃん達が言ってたんだ。
その人、きっと"奴隷"って人だよ?"奴隷"はね、人じゃないんだって。
だから、その人は助けなくてもいいだよ?」
何の悪気も無い。
ただただ純粋なあどけないその言葉。
........。
実際にその言葉をいともサラリと言ってしまう子供達には自分の言っている言葉が恐ろしい差別を述べているなど知りもしないだろう。
「奴、隷?初めて聞いた言葉だわ。
じゃあ、この人は何か悪いことをしてしまった人なの?
だから助けなくてもいいの?」
彼女も他の子供達と同様だった。
........。
それどころか"奴隷"という言葉の意味もその存在も、そのような存在とは無縁であったまだ幼い一国の姫である彼女は知らなかった。
だから彼女は思ったことをそ訊ねる。
ルシアスの言葉は、いつも率直でどこまでも真っ直ぐだった。
「ぼ....僕達には、分からないよぉ」
.