mirage of story
 
 
 
 
 
 
そして、ジェイドの口がゆっくりと開かれる。







「よかったじゃねぇか、嬢ちゃんよ?
嬢ちゃんの大事な彼氏君は、何ともないみたいだぜ?」



「え?」





ジェイドの開かれた口から零れた言葉。
予想を裏切る笑顔。


予想とは逆の反応をとられ、その場で動きが一瞬止まる。
身構えていた身体は安心したはずなのに、また固まった。











「ったく、男が女の子に心配掛けるなんていけないねぇ?
世話のかかる彼氏君で嬢ちゃんも大変だな、ハハッ!」



「────え....いや、まぁ」



「まぁでも暫くは寝かせておいてやるか。

嬢ちゃん。
こいつが起きたらちゃんと教育し直さねぇとなぁ?」




軽い笑みを顔に張り付けジェイドは言うと、そのまま背を向ける。
どうやら彼女を責める気などは毛頭無いらしい。

言動は別として意外といい人なのだなと、彼女は彼を見直した。



ッ。
――――。

部屋のドア。
その前まで来ると、彼は長い銀色の髪を揺らして軽く振り向く。










「あ!そうだ、嬢ちゃん。
今ちょうど、こいつにも話を聞いてたとこなんだ。

よかったら嬢ちゃんからも色々聞かせてくれねぇかい?
ハハハッ!若い男女の旅の話、色々と興味があるものでね?」



そう言うと、シエラを手招きする。



話。
そう言われても彼女にはジェイドを楽しませるような旅の思い出は無かったのだが。

......まぁ、別に断る理由も無い。








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