mirage of story
キトラは彼に会いたかった。
会って、どうして俺の前から姿を消したのかその理由を聞きたかった。
........。
────でも今の彼にはそれは出来ない。
兄貴に、会いたいその人に出逢ってしまえば彼ははその人を殺さねばならない。
大切なその人に、兄貴に刃を向けなければならない。
それが任を受けて此処にいる彼の責任であり宿命。
「兄貴が死ぬなんて―――俺は絶対に嫌だよ」
まだ幼い彼には重すぎる現実。
この街に本当に兄貴が居るとして、自分は兄貴に出逢ってしまっていいのだろうか。
きっと自分は兄貴に刃を向けることは出来ない。
そう分かり切っているのに、自分は彼を捜していいのだろうか。
会いたいという気持ち。会ってはいけないと思う気持ち。
対なる気持ちは拮抗するばかりで、どうしようもなくもどかしい。
「.......兄貴が無事でまた戻ってきてくれたら、それが一番いいのに」
混ざる想い。
そんな想いの中の本心が、キトラの口から零れる。
聞かれてはいけない本当の気持ち。
「ふぅ.......」
キトラは一人。
人通りの少ない脇道の、そのまた脇で誰にも知られることなく溜め息をつき、もう暫くそのまま時の流れに身を任せることした。
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