mirage of story
「────使うというのは、指に填めるってことですか?」
「........何だ知らないのか。
ハハッ、すまないね!どうやら俺の勘違いみたいだ!
何でもないさ?気にしないでくれ」
彼女の言葉に、彼は何処か拍子抜けしたようだった。
彼女はただ自分の中に浮かぶ唯一の指輪の使い道を言っただけ。
指輪を使う、そう言われて思い浮かぶのは指に填めるくらいしか彼女には思い付かなかった。
そんな彼女の様子に、ジェイドは何処か安心したように笑って何事も無かったかのように話を流す。
一体何なのか。
指輪を使えるか、と聞いてきた意味も意図も判らないままのシエラは納得出来ずに言及しようとした。
だが、彼の笑顔の裏にある見えない威圧感が彼女にそれを許さなかった。
「で、嬢ちゃん。
.......それを何処で手に入れたんだい?」
「.........いいえ。
さっきも言いましたが、これは記憶を失うその前から持っていた唯一の物です。
戦いに巻き込まれ、記憶も自分自身の名さえも判らずに倒れていた私がずっと離さず握り締めていた指輪です。
だから判らないんです。
貰った物なのかも拾った物なのかも―――誰かから奪った物なのかも、そう.....何も私には判らない」
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